沖縄の海でダイビングやシュノーケルの際に浅場から良く出会う機会が多い、クロガシラウミヘビはコブラ科に属するウミヘビで猛毒を持っています。
本研究グループの構成員は次の通りです
京都大学野生動物研究センター 岸田 拓士 特定助教、自然科学研究機構生命創成探究センター 郷 康広 特任准教授、辰本 将司 同特任研究員、理化学研究所生命機能科学研究センター 辰見 香織 テクニカルスタッフ、工樂 樹洋 同チームリーダー、琉球大学熱帯生物圏研究センター 戸田 守 准教授
エラブウミヘビ海の爬虫類!コブラ科で強い毒を持つが、掴んだりしなければ大人しい.
我々ヒトもまた、かつて海棲種であった祖先から、両棲種を経て現在の陸棲へと進化しました。古生代のデボン紀から石炭紀にかけて経験した陸上環境への適応進化は、我々ヒトを理解する上で非常に重要な進化イベントだと考えられています。この時我々の祖先はどのような困難に直面したのか。そしてその困難をどのように解決したのか。その解決策は、今現在の我々をどのように束縛しているのか。こうした観点からヒトを理解するためにも、その逆向きの進化を最近になって経験したウミヘビ類は重要な生物グループです。今後は、魚類・両生類・羊膜類の間のゲノムの相違と、陸ヘビ類・エラブウミヘビ類・真ウミヘビ類の間のゲノムの相違に関して詳細に比較していくことで、海から陸、あるいはその逆方向の適応進化の分子的基盤について、さらに理解を深めていくことを予定しています。
本研究は、日本学術振興会の科研費(15K07184, 18K06378, 16H06531)および琉球大学熱帯生物圏研究センター共同利用共同研究の助成を受けました。
コブラ科の一覧。例えば,クロッカーウミヘビ,ワモンベニヘビ,ベルチャーウミヘビ,サンゴヘビ属などがあります。
本研究では、海棲種と両棲種の両方のウミヘビ類のゲノムを解読して国際的なゲノムデータベース上で公開しました。今後は誰でもこのデータベースにアクセスして、自由に解析することができます。両棲種と海棲種の両方が現存する羊膜類グループは、ウミヘビ類の他には存在しません。このため、本研究で解読されたゲノム配列データは、今後のこうした適応進化研究において広く利用されるものと期待しています。
本研究は、海洋環境への適応進化に伴う、鯨類とウミヘビ類との間におけるゲノムレベルでの収斂進化を明らかにしました。また、エラブウミヘビ類に代表される両棲種は、海洋進出の過渡期にあると位置付けることが可能であり、そうした適応進化のプロセスを考える上で重要であることが示唆されました。
Elapidae ウミヘビ、コブラ科 Sea snakes, Cobras ideas
次に、解読したゲノム配列に含まれる嗅覚受容体遺伝子を全て同定して、陸ヘビのゲノムと比較を行いました。陸ヘビはおよそ3~400個の嗅覚受容体遺伝子を持っていますが、この数はエラブウミヘビ類では100個前後、真ウミヘビ類では60個前後にまで減っていました。鯨類ほど極端ではありませんが、やはり真ウミヘビ類のゲノム中に存在する嗅覚受容体遺伝子の数は、陸ヘビのそれよりもずっと少なくなっていました。加えて、真ウミヘビ類に残された60個の遺伝子は、鼻腔での発現が確認されず、実際には使われていない可能性が示唆されました。おそらくは、ウミヘビ類は海へと進出してからまだ日が浅い(1000万年以内だと考えられています)ため、不要となった遺伝子を全て失うのに十分な時間が経過していないのではないかと考えられます。同じく嗅覚受容体遺伝子の数を減らしたエラブウミヘビ類ですが、彼らの鼻腔ではこれらの遺伝子はきちんと発現していました。エラブウミヘビ類は産卵などのために陸上環境も利用しているため、そうした場面で陸上の嗅覚も必要としているのでしょう。
本研究でゲノム配列を解読した種は次の通りです
エラブウミヘビ類
・ヒロオウミヘビ Laticauda laticaudata (図1-A)
・アオマダラウミヘビ Laticauda colubrina
真ウミヘビ類
・クロガシラウミヘビ Hydrophis melanocephalus (図1-B)
・イイジマウミヘビ Emydocephalus ijimae (表紙写真参照)
沖縄の海でダイビングやシュノーケルの際に浅場から良く出会う機会のあるクロガシラウミヘビはコブラ科に属するウミヘビで猛毒を持っています。
これまで、海洋環境への適応進化に関してウミヘビ類に着目した研究はほとんど行われておらず、ゲノムなども全く解読されていませんでした。このため、本研究ではまず、海棲のウミヘビ類(真ウミヘビ類)と両棲のウミヘビ類(エラブウミヘビ類)それぞれの全ゲノム配列を世界に先駆けて解読するところからスタートしました。
現在の地球上には、生まれてから死ぬまで生涯を水中で暮らす羊膜類が、鯨類以外にも2グループ存在します。海牛類(ジュゴン・マナティー類)とウミヘビ類です。特にウミヘビ類は、鯨類とは系統が遠く離れた爬虫類であり、両棲種と海棲種の両方が現存しています。本研究では、ウミヘビ類に着目して、彼らのゲノムが陸ヘビと比べてどうなっているのか、そして両棲種のゲノムは陸ヘビや海棲種のゲノムと比べてどうなのかを探りました。
有鱗目コブラ科エラブウミヘビ属に属する蛇の総称。学名:Laticauda。 1.に属する蛇の一種。エラブウミヘビを参照。
こうして陸上環境への適応進化を遂げた羊膜類の中から、いくつかのグループが再び海へと戻りました。陸から海へと生活の場を移すにあたって、呼吸や移動の方法、感覚器官など様々なものを水中環境に合わせて作りかえなければなりません。水中環境への適応という共通した課題に対して、互いに異なる系統的背景やボディプランを持つ複数の生物グループがそれぞれどのような答えを出したのでしょうか。羊膜類の海洋進出は、自然が行った進化の壮大な実験と捉えることができます。
有鱗目コブラ科エラブウミヘビ属の動物で作られた煮物をいただいた。美味かった。
太古の海で誕生した我々の祖先は、古生代のデボン紀から石炭紀にかけて、2つのステップを踏んで水中から陸上へと適応進化を遂げました――まずは両棲的な(水中と陸上の両方の環境を必要とする)四肢動物が登場して、次に四肢動物の中から、水中環境を必要としない羊膜類が登場しました。
九州南方から沖縄・先島諸島へと連なる南西諸島にすむエラブウミヘビ ..
本研究は、海洋環境への適応進化に伴うゲノムレベルでの収斂進化(全く系統の違う動物が類似した形質をもつように進化すること)を明らかにしました。また、現在のクジラ類は生涯を海で過ごしますが、彼らの祖先ムカシクジラ類は陸地と海の両方を必要としていました。それら祖先のゲノムはどのようなものであったのか、そうした問いに対する答えも示唆しています。
おとなしい性質とはいえコブラ科の毒蛇。黒潮に乗って流れ着いたのか近年、高知.
ウミヘビ類は海に生息するコブラ科ヘビ類の総称で、卵生で陸に産卵するエラブウミヘビ類と、胎生で生涯を水中で暮らす真ウミヘビ類の二つのグループに分けられます。岸田 拓士 野生動物研究センター 特定助教は、自然科学研究機構生命創成探究センター、理化学研究所生命機能科学研究センターおよび琉球大学と共同で、エラブウミヘビ類と真ウミヘビ類両方のゲノムを解読して、陸に住むヘビとの違いを探りました。真ウミヘビ類のゲノムには、クジラなど海棲哺乳類と同じような変化が起きていました。陸と海の両方を必要とするエラブウミヘビ類のゲノムは、陸ヘビ類と真ウミヘビ類の中間状態であることが示唆されました。
夜行性で、昼間は海岸にある岩の割れ目などで休む。 コブラ科エラブウミヘビ属に分類されるヘビ. 極めて毒性の高い神経毒を持つ。
従来、こうした羊膜類の海洋環境への適応進化を探る上で、クジラやイルカなど鯨類がモデルとして扱われてきました。鯨類は、始新世の初期―およそ5500万年前に偶蹄類から分岐した海産の哺乳類です。彼らは海へと進出するにあたって後肢を失い、前肢はヒレ状になりました。鯨類は偶蹄類から派生したため、彼らのゲノムはウシなど偶蹄類のゲノムとよく似た配列をしています。しかし、いくつかの遺伝子がコードされている領域が大きく異なっていることがこれまでに報告されてきました。最も顕著なのは嗅覚に関与する遺伝子をコードする領域です。陸に住む偶蹄類は、ゲノム中におよそ1000個もの嗅覚受容体遺伝子を持っています。哺乳類の持つ遺伝子の総数はおよそ3万個なので、彼らの持つ遺伝子のうち30個に1個は嗅覚に関与する遺伝子ということになります。しかし、鯨類のゲノムには嗅覚受容体遺伝子はほとんど存在しません。この遺伝子群をコードする領域そのものが失われたり、あるいは遺伝子としてはゲノムに残っていても、正常な受容体タンパクを作ることができないような突然変異が多くみられるのです。偶蹄類を含めた羊膜類の持つ嗅覚受容体は、空気中に揮発している化学物質を受容するものであり、水中に溶解している化学物質は受容できないため、鯨類のように水中で生活するようになると、この遺伝子は不要になるからだと考えられています。
*マンバの仲間,コブラの仲間,ヒャン,ハイなどを含みます。 ウミヘビ亜科 Subfamily Hydrophiinae
クジラやイルカなど海に生息する哺乳類のゲノムは、陸に住む哺乳類のゲノムと比較すると、嗅覚に関与する遺伝子群をコードする領域などが大きく異なることが知られています。こうした海洋環境への適応進化に伴うゲノムの変化は、哺乳類以外でも見られるのでしょうか。
を食べる。 爬虫類のコブラ科>コブラ(蛇)ウミヘビ亜科(もしくはウミヘビ科)に属する同名の生物>ウミヘビとは全くの別物であり、
今回は嫌われ者のウミヘビを紹介いたしました。海で出会ったら速攻で逃げたりせず、少し観察してみてください。この生き物がもつ新たな魅力に気づかされるかもしれません。
有鱗目コブラ科エラブウミヘビ属に属する蛇の一種。学名:Laticauda semifasciata。 翻訳
これは無害な生物が有害な生物に似ることでメリットを得るベーツ型擬態と考えられています。猛毒をもつ爬虫類のウミヘビのマネをすることで、無力なシマウミヘビは外敵や捕食者の目を欺き、身を守っているようなのです。
上級コブラ科(コブラ、マンバ、タイパン、ウミヘビ、クレイト - 爬虫類学、動物学)
シマウミヘビ(写真)はインド-太平洋に分布し、日本でも沖縄などに生息している「魚」です。ウナギ目ウミヘビ科に分類され、大きさは50~70cmほど。細長い体に白黒の縞というよく目立つ模様は、爬虫類のウミヘビ(写真)そっくり。
エラブウミヘビ は、爬虫綱有鱗目コブラ科エラブウミヘビ属に分類されるヘビ。
中層に泳ぎ出たり、水面まで浮上することは通常はありません。でも、爬虫類のウミヘビは肺呼吸です。水中では呼吸できないため、定期的に水面まで浮上する必要があります。
日本毒蛇紀行 (ウミヘビ編 その2) | トリンリのおもちゃ日記
同じウミヘビという呼び名でも、爬虫類と魚類ですから違いはたくさんあります。外見的にはヒレや鼻管の有無などが挙げられますが、行動でも見分けられます。
エラブウミヘビ 永良部海蛇 Laticauda semifasciata コブラ科 ..
巣穴から体を乗り出してきたところ。ホタテウミヘビ()も本種も、ふだんは砂底に身を潜め顔だけ出している。胴体は意外にもこんな帯模様
Pl.123 コブラ科 エラブウミヘビ属 アオマダラウミヘビ Colubrine Hydrus.
背ビレや尻ビレ、胸ビレ(〇)などのヒレがあり、吻端には鼻管(↑)が目立つ。いずれも魚類のウミヘビの特徴で、爬虫類のウミヘビにはない(写真/堀口和重)